薬草の力で、健康を保つ菖蒲の節句

五節句の3番目は「端午の節句」

現代では「こどもの日」として祝われる5月5日。この日はもともと五節句の端 午の節句にあたります。端午の端は「はじめ」という意味で、「端午(たんご)」は5月最初の午(うま)の日のことでした。それが、 午(ご)という文字の音が五に通じることなどから、奈良時代以降、5月5日が端午の節句として定着していきました。

端午の節句は、その時期に盛りを迎える菖蒲を様々な形でふんだんに用いることから、菖蒲の節句とも呼ばれています。菖蒲には、古来から健康を保ち、邪気を祓(はら)う力があると信じられていました。菖蒲はいわゆるハーブのように、その葉から出る強い香りが活用されたのです。菖蒲湯に入浴し、菖蒲酒を飲み、菖蒲枕に眠るなど、端午の節句は、まさに菖蒲づくしの一日でした。また、こうした薬効の活用だけでなく、家の軒に菖蒲を飾って邪気を祓うという風習も 古くから行われました。

5月は、春から夏への季節の変わり目にあたり、疲れが出たり病気になりやすい頃です。また、田植えという、稲作の最大の要となる行事が行われれるため、 これにそなえて十分な鋭気を養っておく必要がありました。端午の節句には、そんな時期を上手に乗り切る知恵が盛り込まれているのです。

▶︎言葉の響きが産み出した、男の子の節句

江戸時代に入り、勢力の中心が貴族から武家に移るとともに、「菖蒲(しょうぶ)」の音が、武を重んじる「尚武(しょうぶ)」と同じであることから、「端午の節句」は、「尚武(しょうぶ)」の節句として、武家の間で盛んに祝われるようになりました。この節句は、家の後継ぎとして生れた男の子が、無事成長していくことを祈り、一族の繁栄を願う重要な行事となったのです。3月3日のひな祭りが、女の子のための節句として花開いていくのに呼応するように、5月5日の端午の節句は、男の子のための節句として定着していきました。

五月節句飾り

端午の飾り物は、戸外飾りと室内飾りに分かれます。現在、戸外飾りの代表は鯉のぼり(こいのぼり)です。また、室内飾りには甲冑、兜、五月人形、座敷幟(ざしきのぼり)などがあります。勇壮で華やかな五月飾りは武家社会の江戸に始まり、しだいに各地に広まって、今日のような日本の初夏の大切な行事になりました。

戸外飾りと室内飾り

五月に入るとあちこちの家の空に、鯉のぼりが泳ぐ姿を見かけるようになります。端午の節句の飾りには、幟旗(のぼりばた)や鯉のぼりのような戸外飾りと、甲冑や五月人形、座敷幟(ざしきのぼり)のような室内飾りの2種類があります。その両方を飾る家もあれば、どちらか一方を飾る家もあり、また飾り方にもそれぞれの地方の特色が見られます。関西方面の室内飾りでは、陣屋提灯を必ず飾り、名古屋を中心とした地域では、鎧兜の代わりに鎧姿の子供大将を中心に置くことが多いようです。また関東でよく飾られる鍾馗(しょうき)の人形は関西方面ではあまり見られません。